嗚呼 君に 武士(もののふ)をみゆ
 市議会を辞して県会に駒を進めんと決意した 永井一雄議員の男涙を詠う
 

   君や 

   為政者になりて はや十六年の星霜
   万感交々(こもごも)去来して
   議会壇上に登るを許され 最後の演説に
   君や 不覚にも涙落(お)つ

   為政者は 為政者たらんと欲するに
   ときに世論に憤り ときに世情に背を向け
   ときに民に失望し ときに民と共に歓喜す

   君や 

  政(まつりごと)に夢を追わん
   妻が竈(かまど)の煙が煙いと嘘ぶいて 
   そっと涙を拭(ぬぐ)うも
   見て見ぬふりして 心で詫びたる 日もありなん
   いつかは議会の華となるを いつかは須坂の・・
   為政者は ともに泣けぬ 運命(さだめ)なり
   時あらば 馬に鞭打ち 戦場に臨まんが 運命なれば

   蒼天は 無限にして 果てしなし
   蒼天は雲なく どこまでも ただ蒼(あお)し
   為政者は 果てし無き夢を見るものぞ
   蒼天を貫くごとき 夢みるが 為政者の運命なり

   君や

  為政者は 為政者たらんと 歩み来て
   議会壇上に登るを許され 最後の演説に
   万感交々(こもごも)去来して
   君や 不覚にも涙落(お)つ

   君や
   逝ってしまった朋との 思い出をなぞりか
   妻が涙を拭(ぬぐ)った 姿ぞ浮かびてか
   若き市長と共に闘い 政に燃えた日々が浮かび来て 
   為政者は 無欲無心の赤心が誇らいと
   路地を駆けた 青春の日々が浮かびてか
   夜学に通いて 仰いだ月が、懐かしく浮かびてか

   今 

  静かに市議会を 去らんと決するに
   君や 

  不覚にも涙落(お)つ
   男は いつも いつまでも 蒼き天空に 夢追うものぞ
   嗚呼 君に 武士(もののふ)をみゆ
北行(hokugyou)作