【自主研究:地方議会と市議会議員】

「市議会における再議決論と専決処分の是非論」



 仮に3月定例市議会で議決された国政絡みの市条例等が、衆議院で憲法第59条2項により再議決されて、法律が成立し法の施行を市に求められた場合における、市議会の対応についての一考察。


 この場合に、市議会において議決した条例の効力はどうなるのであろうか。国権の最高機関である国会での成立を停止条件として市議会が可決したのだから、議決した条例に何ら差し障りはない説(停止条件説)。国会が衆議院の再議決の手続を経るのと同様に、市議会で議決した条例も効力は一旦失効し、国会の成立をまって市議会も再議決を要する(解除条件説)が考えられる。


 私は、市議会も再議決が必要であると考える(解除条件説)。理由は、地方分権時代の議会運営は、地方議会も自治権があるものであること。

参議院で成立をみなかったことは、法律案が取り消しされたと看做すべきであること。国会の独断専行を抑制するため。国会の無責任な議会運営をたしなめるためである。


 ところで、地方自治法179条はこれらの事態を想定して、「普通地方公共団体の議会が成立しないとき、第百十三条ただし書の場合においてなお会議を開くことができないとき、普通地方公共団体の長において議会の議決すべき事件について特に緊急を要するため議会を招集する時間的余裕がないことが明らかであると認めるとき、又は議会において議決すべき事件を議決しないときは、当該普通地方公共団体の長は、その議決すべき事件を処分することができる。


  3項として、 前二項の規定による処置については、普通地方公共団体の長は、次の会議においてこれを議会に報告し、その承認を求めなければならない。」と規定し、行政の暗礁や麻痺状態を回避するために、市長に「専決処分」を認めている。これは法律の規定による「専決処分」である。


 更に、議会から任された「専決処分」もある。地方自治法180条で「普通地方公共団体の議会の権限に属する軽易な事項で、その議決により特に指定したものは、普通地方公共団体の長において、これを専決処分にすることができる。



 2. 前項の規定により専決処分をしたときは、普通地方公共団体の長は、これを議会に報告しなければならない」とする。


 然し、「専決処分」が認められている理由と、今回私がなぜ再議決を必要とするのかと混同してはならない。


 私は、地方自治法179条中「特に緊急を要するため議会を招集する時間的余裕がないことが明らかであると認めるとき・・・」の法文は「現代の交通事情や地方議員の機動性を斟酌すれば、実情に合わない文言であるから改正すべき」と主張しています(但し、離島を抱える県や市は、これこそ専決処分で対処すべきです)。


 市議会議員が名誉職であった時代の「市長宜(よ)しなに」とする発想は改められるべきであり、専決処分を安易に認めることは、議会の無用論に拍車をかけるものであると私は思っております。なぜならば、市議会は決してお飾りの機関ではないからであります。


                                        2008.06.26