私にとっての「紫毫之価如金貴」とは
 須坂市議会議員 佐 藤 壽三郎  


 中国では古来より筆で最高を極めたのが「紫高筆」と言われているらしい。何故に最高の筆かと言うくだりは、白楽天の「紫高筆」と言う詩に読み込まれている。

 由来は・・・・・

  紫高筆
  尖如錐夸利如刀
  江南石上在老兎
  喫竹飲泉生紫毫
  宜城工人采為筆
  千万毛中揀一毫

と書き記す。だから、この紫高筆を使うときは、心して文字を刻めと白楽天は戒めを綴るのが、次の詩である・・・

  起居郎
  待御史
  爾知紫毫不易致
  毎歳宜城進筆時
  紫毫之価如金貴
  慎勿空将弾失儀
  慎勿空将録制詞
と!

 私は、市議会議に当選した平成11年春に、若き日に師事した弁護士笠井盛男先生から、恩師が長らく愛用された机と書棚そして万年筆を祝として戴いた。 爾来、机と書棚は思考する場とし、万年筆は常に我がダブルの懐中に温め、議員としての重要な認(したた)めものを行う時は、必ずこの万年筆の鞘を払う。

 市議会議員は、たかが市議会議員、されど市議会議員であるとする矜持がある。国会議員、県議会議員、数多(あまた)いる市町村議員からすれば、たかが信州の片田舎須坂の市議会議員風情がと言われることもある・・・

然し、須坂にも山河があり須坂の空がある。五万四千の市民の息遣いが聞こえる町であり、須坂を遠く離れた須坂人にとってかけがえのない故郷であるを慮るとき勇気が湧いてくる・・・

 私は、議会での討議に当たって、「紫毫之価如金貴、慎勿空将弾失儀、慎勿空将録制詞」の件(くだり)を心に刻む。私にとっての「紫毫之価如金貴」とは、これぞ将に恩師に戴いた万年筆に他ならない!

平成19年10月26日記す。