新相馬節は心を打つ


 あの忌わしい大津波がいきなり東北の沿岸から内陸深く押し入り、数多の同胞の命を奪ってから2年の歳月が過ぎ去った。東日本大震災の特集番組が組まれる中、私は視聴していて涙が流れてならない。凡そ千年に一度の大地震がこの日本列島を襲い、数多の命が奪われることの繰り返しだとすれば、これほど悲劇な日本列島の地理的・地勢的な宿命と悲劇な民族もあるまいと最近は感じてならない。

 私の大好きな民謡に「新相馬節」がある・・・
震災前までは、嫁ごの風呂焚く煙の煙さの件(くだり)が一番好きな歌詞であったが、最近は一番の

 ハア〜 はるか彼方は相馬の空かョ 相馬恋しやなつかしや・・・

 この歌詞こそが、やはりこの民謡の全てであると感じるようになった。
最近この歌詞を唄おうとするが、大津波で命を落とされた人々のことを思う時、両親や親族を津波で喪いながらも健気に悲しみを堪えて日々を明日に繋ぐ少女や少年を思い浮かべるとき、私は震災前と違って今はこの民謡が声が詰まって中々唄えなくなった。

 この民謡の歌詞は、福島県地方に昔から伝わる歌詞の採詞であることを知るとき、節回しは歴史的には新しいが、歌詞は尚更ながら、繰り返す津波や悲しみに耐えた含蓄のある民謡と思えてならない・・・

 青春時代・・・
 福島出身の女性が僕らの仲間にいたが、二十歳代に郷里に帰って行かれた。
名前は確か矢部さんであった。仲間と一緒に語った日々がなつかしい・・・
願わくば、願わくば、大震災を逃れて命あって欲しいと震災以来祈っている。

2013/3/10記す。