時空を越えた約束事

 私が兄とも慕う頼みある間柄であった御仁の今日は納骨であった。葬儀の日は議会と重なり、葬儀が営まれる早朝に、私は亡骸に今生の最後の別れを告げて議会に臨んだ・・・
議員の職責にある以上、議会最優先を日々の生活とすることは選挙民との約束で有る以上許されよと、亡骸に葬送に臨席出来ないことを詫びた。あれから早いもので今日は四十九日・・・

 読経のあと全員で墓地に移動し、恙無く納骨を済ませた。

 この齢になるまでに、数えてみると実に多くの納骨に立ち会ってきた。
少年時代に父、祖母の・・・
成年になってからの妹と母・・・・
更に叔父、叔母・・・そして従兄たちの・・・

 血肉分けたる訳ではないが、将に以心伝心、異体同体の表現に相応しい兄弟以上の付き合いをした親友と・・・

 思えば、悲しい別れを重ねて来ている。


 人の世は邂逅(であい)であるが、これとて合縁奇縁がもたらす糸の手繰り寄せではなかったか・・・
人の命の長さは誰も分からないが、つらつら感じるに人生は将に一炊の夢でしかない。それは、手中で雪玉をどんなに硬く握り締めて造っても、所詮は融けて形を失うものの憐れさに似ている。

 然れども、後に残った拘わりのある人々の手によって、懇ろに野辺送りをすることこそ、頼みある時空を越えた約束事の履行であると感じている。

 私は、結婚式のお披露目も大切であるが、人生の関わりがあっては、寧ろ今生の別れに立ち会うことこそが男子の本懐と、齢を重ねると共にその思いが増すようになている・・・

 故人のご冥福を真摯にお祈りする。万感の感謝を込めて 交誼を賜りありがとうと・・・  合掌

2012/4/5記す。