青春の追憶


貴様と俺


思えば・・・
中学時代は無限の志しを抱けるものでる
ある日、いつの日にか共に大輪の華をさかそうぜと
将来の夢を誓った友がいた
刎頸の友の誓いは固かった
将来の大志は違っていたが何故か貴様とは気がおうた

高校を終えると文士を志す貴様は早稲田に進んだが
多感な貴様は何故か挫折して郷里に戻って来てしまった・・・
俺は遅れて二十歳になって行き違いのように東洋に学ぶ機会を得た
雪まだ残る三月上京する前の晩に貴様を訪ねて
「とにかく二十歳代は田舎にいては駄目だ俺と一緒に上京しようぜ!」と説得した
貴様は無言でドラムを叩いていた・・・

お盆に帰省した俺に
貴様は心も癒えてくれて、お盆の折に再び東京に出ると伝えに来た
その日のうちに事後を俺に託して貴様は上京した
今度は貴様と俺が東京の空の下にいるので大丈夫だと感じた
再上京した貴様はコンピューター関係に進路を見出し
新分野のコンピュータ専門学校に駒を進めた
学舎は違っても又進むべき進路が違っても
大輪の華を咲かす目標は不変なものであって
互いに必死に学んだ
青春は人生の街角ばかりであり方向を失いかけた時も度々あったが
一度限りの人生ならば横道にそれ大路を歩もうと
共に励まし合って青春時代を過ごしたものである

人生には数多の応援歌がある・・・
数多の人生の応援歌のその中で
唄ったのは校歌であり逍遥歌であり郷里の須坂小唄であったが
井沢八郎が唄った「男傘」は貴様と俺の応援歌であった
この唄は青年・壮年時代を通しての応援歌であった

何と言うことだ何と・・・
貴様は還暦で黄泉に旅立ってしまった・・・
今では夢でしか貴様に逢えなくなって久しい
この季節になると逝ってしまった貴様が偲ばれる
俺が生ある限り貴様との友情は絶つことはないぞ
意識がある限り友情と信頼は失せないものぞ

先日You Tubeで「男傘」を探してみた
曲を聴いていたたら不覚にも不覚にも涙が幾筋もこぼれ落ちた
時として手柄話や失敗談を肴にビールを飲んだっけ
碁を打って打って夜を明かしたこともあったな
将に若き日の一途な航跡を見る思いであった

上野駅と銀座、五反田、杉並和田そして練馬大泉の街は
貴様と俺の人生の双六の止まり木だったな・・・

2014年7月13日記す。