東洋大学白山学舎の思い出 その3

青春時代は空腹だ!


 母校・東洋大学白山キャンパスの思い出は尽きない・・・
大学構内にある学生食堂(学食)は、慢性的金欠病の学生にとって将に神様であった。かけうどんを2杯食べ、3杯目は卵を落として月見うどんにして食べても合計百円で済んだからである。

 ある日の学食でのことである。
食券は自動販売機がまだ無くて、長い列を作って買ったものである。食券を売っている女性に、僕の前に並んでいた学生が「皿洗いのアルバイト」を申し出ているようであった。アルバイトは彼女の判断で即決されるようである・・・

 交渉成立か?
 学生が彼女から手書きのメモ用紙を貰いカウンターに持ってゆくと、ご飯は大盛、おかずも超大盛が、お盆にのせられて渡される。彼はそれをテーブルに運んできて旨そうに食事をとる。腹を満たした彼は、やがて徐に調理場に入っていって皿を洗い始めたではないか。如何にも手馴れた様子である。

 「先ず、満腹に食べさせてから、アルバイトにかからせる」の慈愛が素晴らしいではないか。恐らくポニーテールに結ったチケット売り場の彼女は、貧乏学生からの「皿洗いの申し出」には、すべてOKを出してくれたのであろう。アルバイト代が食事の支給!それもすべてが大盛!学生も自尊心が傷つかないで済む心遣いだ・・・

 東洋大学が在学生を支える心意気は、学食経営者にまで徹底しているのかと感じた瞬間であった。僕は書生をしていたので、「学食で皿洗い」のアルバイトをすることはなかったが、然し安くて旨い学食の恩恵に与(あずか)って今日まで生きていることは、詰るところ、学食で皿洗いをした学生とこの点については同じであろう。白山台は人生のうちのたかだか4年間でしかないが、遠くなった学生時代を思い返す時、つくずくと学食の有難味を感じる。

2005/05/21 (土)