議員活動(3期目)市会報告書

第14号 ・ 統 合 版

市議会議員佐藤壽三郎の議員3期目須坂市の6つの課題

須坂市の財政状況と議員活動報告


 
議会で行われる一般質問の市長の答弁は、須坂市の意思や方向を明確に知る手立てと申せます。私は答弁要旨を「議会メモ」として自分なりにまとめて活用しております。今回は膨大な「佐藤寿三郎の議会メモ」から、須坂市が今抱える課題と市長等の答弁内容を要約し、併せて私の考えを【私見】としてお示しいたします。なお、須坂市の意思や方向については、平成21年12月議会までの一般質問資料に基づいておりますことを御承知置きください。

 日本経済新聞社産業地域研究所から、地方議会の改革の現状を把握するため、全国807市区議会の議長にアンケート調査がありました。私は須坂市議会議長として回答をいたしました。その結果が日経グローカル4月号で発表されました。須坂市議会は全国第31位のランク付けを得ました。私どもが積極的に推し進めた議会改革が本物である証しと自負しております。

 佐 藤 寿三郎 の 議 会 メ モ 

  課題1.福祉・医療について


【 県立須坂病院の独立行政法人化と須坂市の財政負担について 】
@ 須坂病院が独立行政法人になっても、県は法人の設立者としてこれまでどおり運営に責任を持ち、不採算医療や病院設備に対する負担金を支出する。
A  須坂市は、須坂病院を市民が安心して医療を受けられるための地域の中核病院として、県内唯一の第一種感染症指定医療機関、エイズ治療中核拠点病院、臨床研修医や看護師の人材育成を担う県全体の病院と認識している。
B 須坂市は、病院経営についての直接的な財政負担を考えていない。しかし、須坂病院を含めた地域医療全体の課題に対して、市がすべき負担・支援については、議会に御相談しながら必要に応じて対応したい。


【私見】
 平成21年に示された須坂病院の地区別利用者数の割合(100%)は、須坂市民67.4%、上高井郡 14.2%、長野市6.6%、その他11.1%、県外0.7%です。須坂病院は須高地域の住民が万が一病気になった場合に、頼みの綱である病院であることが良くわかる資料です。我々が須坂病院を、将来にわたり安心して医療を受けられる須高の中核病院として、地域医療福祉ネットワークの推進を図り、積極的に須坂病院を支え育てる意識が必要と思います。



  課題2.行政改革について

【 須坂市の財政改革プログラム策定の留意点 】
@ 須坂市は平成14年の市内企業の事業縮小に端を発した経済危機に伴う市税収入の大幅な落ち込みや、国の三位一体の改革による国庫補助負担金や地方交付税の見直しの影響を受け、それまでの行政サービスを維持することが困難な状況になった。
A そこで、歳入の確保と経常経費を初めとした歳出の削減を一体的に行い、持続可能な歳入に見合った収支均衡型の財政構造を確立することが必要となった。平成16年2月に財政改革プログラムを策定し、平成17年9月には改定を行い、さまざまな改革を取り組んできた。
B 平成17年3月に総務省は、地方公共団体における行政改革の推進のための新たな指針を示した。財政改革プログラムは須坂市が独自に策定したものであるので、適宜な見直しを行うとしたことに対して、行財政改革チャレンジプランは総務省の集中改革プランに位置づけて、計画のほかに年次計画に沿った改革を実施し、検証して公表を行うこととした。
C 平成22年度を初年度とした新たな行財政改革チャレンジプランの策定にあわせて財政改革プログラムをチャレンジプランにおける財政シミュレーション及び財政における改革項目として位置づけ統合することとした。


【私見】
 「小さな効率的な政府」を標榜した小泉構造改革の目的を思い返しましょう。労働人口が減っていく現実と、グローバリーゼーションの波に乗り切れないと国力が失われると判断し、政府の無駄遣いをなくすために徹底した行財政改革を実現すべく断行したはずです。不良債権の処理、道路公団の民営化そして郵政民営化は一連の流れであったと思います。

 最近は「民間でできることは民間がやる」とする構造改革が停滞していると思いませんか。我々は構造改革の反転や先祖返りを許してはなりません。これを許せば長期的に国の財政をみた場合に、税収は落ち込み政府も地方自治体も活力を失い、結果的に国民(市民)にツケが廻ってきます。

 自民党の定額給付金、民主党の子ども手当の創設、農家への戸別所得補償は、国民が納めた税金を一方で国民に現金をそのまま返えすような形の政策であり、これは税金の還付でなくて「ばらまき」です。国家財政を思うとき健全な国策と言えません。子ども手当の財源は、半額支給となった10年度で2.3兆円必要とされ、満額支給の場合は5.3兆円必要とされています。歳出削減で新たな財源を生み出す計画は果して可能なのでしょうか。子や孫に国の借金のツケを押し付ける政策は避けるべきです。

須坂市は議会に「須坂市行財政改革第2次チャレンジプラン実施計画書」を示しました。それによると3年間で8億1,061万2千円の経費削減目標効果額を掲げています。地方分権、地域主権時代を睨んでの施策であり、須坂市の構造改革を推し進める手立てとして期待します。



【 学校給食センター調理部門の民営化について 】
@ 児童・生徒のことを第一に考えてサービスの向上を目指すものである。
A 給食の質や衛生管理、安全性の向上、また食育の一層の推進を図りながら効率的な運営を行い、最少の経費で最大の効果を上げるために実施していく。


【私見】
 学校給食センターの調理部門の民営化に関して、所管課から議会に示された資料によると、今までお勤め頂いていた嘱託職員15名と臨時職員6名の皆さんが、希望によりこの4月より正社員として15名、パートとして5名の方々が就職されました。これこそ民営化の成果だと思います。


 
課題3.子育て・教育について


【 保育園の統合計画 】
@ 公立保育園の統合に関する市の方針は、須坂市保育所運営審議会の答申を尊重して行う。
A 仁礼保育園と夏端保育園の統合。井上保育園と須坂千曲保育園を統合して、それぞれ新園を建設していく計画。
B 統合保育園の新設により、安全な保育環境が整備され、多様化する保育ニーズや市民の意見を反映した保育サービスが提供できるものと考える。


【私見】
 労働人口が減っていく。日本の人口はこれからもどんどん減って、今のままで推移すれば2050年には我が国の人口は9500万人に減ると言われています。女性がもっと社会に進出して、働き手として社会を担う時代です。働く女性のために、更に多くの託児所や保育所の増設を図り、女性が働きやすい職場や、子どもが出来ても働ける社会環境を整えることが必要です。亦。定年後も元気な人は社会の第一線で活躍できる場を整えるべきです。

 市の須坂南保育園に変わり社会福祉法人わらべ福祉会の手にかかる新保育園が出来ることを歓迎します。保育園が公立であらねばならない必要性がないことを示したと思います。新園を開設するに莫大な建設費用を要することを考えると、市は公立保育園の統廃合と並行して、公設民営化を強力に推し進めるべきものと思います。

 私の公約でもある「市職員の削減を推し進め小さな行政庁の構築」は、民間でできる業務は市庁業務から切り離し民間に解放することであり、結果的に嘱託職員や臨時職員といったいびつな雇用形態を解消でき、青年に生涯に亘っての生甲斐のある雇用の場を広げられるものです。民営化は今後も粛々と推し進めるべきものと思います。



【 長野養護学校分教室・須坂市立特別支援学校開設について 】
@ 統合保育園の新設により、安全な保育環境が整備され、多様化する保育ニーズや市民の意見を反映した保育サービスが提供できるものと考える。
A 地域の子供は地域の子供の中で育てたい。分け隔てなく地域の子供と一緒に育って欲しいという保護者の願いを受けて、須坂市の独自性と主体性の中で特別支援教育を実施することの方が、地域の特色を生かした須坂らしい教育ができるのではないか。須坂市の学校の中で開設したほうが交流を重視した、また地域の子供たちの中で育てられるのではないかと協議した。
B いきなり市立の特別支援学校とするよりも、初年時に長野養護学校の須坂分教室を開設し、次年度に須坂市立の特別支援学校を開設することで、県教委や長野養護学校の指導も仰いでいる。


【 分教室開設後の須坂市立特別支援学校計画について 】
@ 須坂市立特別支援学校は、須坂小学校の南校舎1階の教室において開設予定。毎年、入学者を加えて将来的には10人前後の児童数を予定している。
A 中学部については、小学部の入学状況や保護者の意見をお聞きしながら設置を考えていきたい。10名程度の生徒数を予定している。
B 高等部については、現在進行している高等学校再建整備後の県有資産を活用し、高等部の設置を引き続き県に要望していく。これが叶えば乳幼児から幼稚園、保育園を経て小学部、中学部、そして高等部と一貫した障がい児教育がこの須坂市で実現できる。 


【 私見 】
 私はご承知のとおり「こどもは須坂の宝」と常々発言しております。こどもはあまねく平等に教育を受ける権利があり、分け隔てなく一緒に育って欲しいと願っております。苦学をした私の体験から言えば「教育とは学齢期をのがせば身につかない」と感じます。この4月6日須坂市立特別支援学校が須坂小学校内に開設されました。須坂市や教育委員会を初め関係各位の熱き思いと信念が実ったのです。市民が誇りに思う学校に皆で支え育てましょう。


 
 課題4.須坂市の経済不況対策について

【 須坂市独自の支援策 】
@ 就業支援センターでの休日就業相談も定例開催日以外に6日開催し、6名の相談があった。このほかにも企業訪問による現状把握や企業振興ニュースの発行など経済対策、情報等の提供に努めている。
A 平成21年4月1日から市制度資金の内容を一部改正し、中小企業の借り入れ負担を軽減させるため、普通資金を除くすべての資金の貸付利率について0.1から0.2%の引き下げを行い、原油・原材料高対策資金を経営安定資金に統合し、貸付限度額を2,000万円から5,000万円へ引き上げている。


【私見】
 国内の企業内失業者(隠れ失業者)が607万人にのぼると言われています。08年12月に政府は企業内失業者に支払う手当の一部を助成する「雇用調整助成金」を受けやすくし、これにより09年7月の支給対象者は255万人で前年同比の約1370倍、支給決定額は約756億円でした。「雇用調整助成金」による補助も限界があるとすれば、二番底などで景気回復が遅れれば、一層の雇用削減が進み、失業率が増える可能性が指摘されています。

 須坂市の景気回復と産業振興をはかるために、地域主権によって地域経済を活気づけることが可能か。高速道路の上限料金制の導入よって須坂の活性が図れるか。須坂市の特産品(地域ブランド)の売り込みで須坂の活力を引き出せるか。これこそ机上で論じる前に須坂の市民・企業が結束して、須坂にとってビジネスチャンスと捉え行動をまず起こすべきと考えます。




 課題5.最終処分場について

【 埋め立てる溶融スラグの成分について 】
@ 溶融スラグに含まれる有害物質の含有量は、カドミウム、鉛、砒素ついては1キログラム中150ミリグラム以下。六価クロムは1キログラム中250ミリグラム以下。総水銀は1キログラム中15ミリグラム以下だとしている。

【 仁礼地区を選定した理由について 】
@ 候補地本体は、土砂採取跡地としてそのままとなっている。周囲は鳥獣害に悩む遊休農地が多く、公共事業を行うことにより景観面、防災面及び自然復旧面の整備が可能となる。
A モデル的な施設として、エコパークを整備することにより、地域振興に寄与できると確信。
B 候補地は土砂採取跡地でくぼ地となっているので、掘削発生土が少なく、埋立地として地形が利用できるなど、今の状況よりもよりよい地域になると判断した。

【 雨水処理について 】
@ 埋立地周辺に降った雨水は、下流域に洪水などの影響がないよう、調整池で貯水後に適宜放流する。
A 最終処分場内に降った雨水は、埋め立て物を洗い出し、その後処理施設に 送られ排水基準値以下にして放流する。仮に異常があった場合には、放流を停止し、処理水を調整槽へ返送し再処理を行うとともに、原因を調査して正常な処理へ戻す安全対策を講じる。


【 私見 】
 長野広域連合(長野市、千曲市、須坂市、小布施町、信濃町、飯綱町、坂城町、高山村と小川村で構成)では「長野地域ごみ処理広域化基本計画」に基づき、ごみの可能な限りの排出抑制・再資源化・減量化を図るとともに、圏域内の既存焼却施設を集約し、安全かつ高度なごみ焼却施設を平成26年度中の稼動を目指して取り組んでいます。ゴミの焼却と最終処分場を分離し、須坂市は最終処分場を引き受けることとなりました。

 長野広域連合を構成する市町村は、いずれはいずこの市町村も何らかの施設等を負担せねばなりません。最終処分場の建設に当たっては、須高地域の子孫のためにも、自然環境を守り公害等の発生を防ぐためにも、最新の最終処分場を手本にし、最高の土木技術をもって施設の建設と運用を図ることが大切だと思います。




 課題6.湯っ蔵んどについて

【 上下分離方式の選択について 】
@ 指定管理者を公募するためには、上下分離して施設については須坂市、そして施設の管理運営者は指定管理者とすることが、湯っ蔵んどの今後の経営にとってふさわしい。それから施設管理者が管理運営をしやすいと判断。
A 一般的に、土地・建物が市のものである以上、付随するものについては市の所有にするということが、主物、従物の関係から適当であると判断した。

【 湯っ蔵んどの実績 】
@ 12年間で入館者数が379万9千人。市へ納めた賃借料3億1,166万6千円。上下水道料4億5,366万3千円。法人市民税などの市税5,985万8千円。下水道受益者負担金437万5千円など、叶{坂健康福祉ランドが須坂市に果たしてきた役割は大きい。
A 叶{坂健康福祉ランドは賃借料として今までに、3億1,166万6千円を市に納めてきた。現在2億900万円余が基金として積み立ててある。

【 今後見込まれる修繕費について 】
@ 今わかっているだけで大浴場の設備関係改修、建築関係改修、給湯方式変更など、約4億円もの多額の修繕費が発生することが見込まれる。


【 私見 】
@ 市民の健康と福祉の増進及び観光振興を目的として、平成9年に須坂市の施設として建設され、誕生の折にこの施設を運営する会社として、第三セクターである叶{坂市健康福祉ランドが設立され運用されてきたことを承知。
A 叶{坂市健康福祉ランドが取締役会等の法手続きを経てあつらえた施設機器を、施設建物の所有者たる須坂市が、叶{坂市健康福祉ランド清算に伴い買い取ることは、当事者間の財務的な処理であります。民法の添付制度における附合(§242・不動産。§243・動産)によって所有権の取得として処理されたことは、法手続きとして何ら問題はないと思います。
B 市民が湯っ蔵んどの設立趣旨を理解され、施設の存続を将来に亘って欲するならば、湯っ蔵んどの健全経営の建て直しに市民は協力すべきであります。「市民無料入館券」で湯っ蔵んどに入浴するだけでなく、市民全員が身銭を切って一家で年に6回、2ヶ月に1回入浴すれば、湯っ蔵んどは市民の健康と福祉の増進が図れる施設として黒字経営が成り立つのです。


【参考文献・資料】○政治のニュース 滝沢中著 中経出版 ○デバイス民法T 早稲田経営出版 ○民法総則 我妻栄著 岩波書店 ○民法1 白羽祐三 中央大学 ○行政法 東京リーガルマインド ○地方議会改革 自治体問題研究所編 自治体研究社 ○日本の論点 文芸春秋編 文芸春秋 ○経済のニュースがよくわかる本(日本経済編・世界経済編)細野真宏著 小学館 ○時事用語 成美堂出版○世界経済ダイジェスト2010 日本総合研究所編 高橋書店 ○日本経済ダイジェス2010 日本総合研究所 高橋書店 ○日経2010年版業界地図 日本経済新聞出版社 ○日経2010年版市場占有率 日本経済新聞出版社 ○市町村財政分析 大和田一紘著 自治体研究社 ○市町村議会の常識 加藤幸雄著 自治体研究社 ○議会基本条例の考え方 加藤幸雄著 自治体研究者 ○月刊新聞ダイジェスト 新聞ダイジェスト社 ○チャレンジプラン(平成16年〜21年度実績)須坂市 ○須坂市行財政第2次チャレンジプラン実施計画書 須坂市 ○実施計画(平成22年度〜平成24年度)須坂市 ○第五次須坂市総合計画・平成21年度市民総合意識調査報告書 須坂市

                                            
発行日:平成22年4月23日